犬の無駄吠えは、飼い主にとって頭を悩ます問題の一つです。
よく耳にするのが、「無視すればいずれ吠えなくなる」というアドバイス。
しかし、実はこの方法だけではすべての犬の無駄吠えが治るわけではありません
では、どうすれば無駄吠えを効果的に改善できるのでしょうか?
私はドッグトレーナーとして、数多くの犬と飼い主さんをサポートしてきました。
犬の無駄吠えを改善するための具体的な方法や無駄吠えの原因、それを改善するための効果的な方法をわかりやすく解説していきます。
犬の無駄吠えの理由
犬は感情を表現するため、また何かを伝えたいときに吠えます。
孤独、退屈、興奮、またはストレスが主な理由です。
飼い主が長時間留守にすると犬は孤独を感じ、不安や緊張を吠えることで表現することがあります
夜泣きや留守中に寂しさを紛らわすために吠え続けるような感じです。
また、そこで飼い主が帰宅したら嬉しすぎて吠えてしまうこともあります。
他にも、餌が欲しい!遊んでくれ!など要求がある時の無駄吠えもよく見られます。
これらの吠える原因の理解は、無駄吠えの改善策を考える上で重要です。
生活環境と不規則なルーティン
犬の生活環境や日常のルーティンも無駄吠えに大きく影響します。
犬にとってルーティン化された日々のスケジュールは、安定した行動に不可欠です。
不規則な散歩や食事の時間は、犬のストレスや不安を高め、無駄吠えを引き起こす可能性があります。
したがって、日々のルーティンを整えるだけでも、犬の安心感を高め、無駄吠えを減らす効果的な方法です。
無視することは効果的?
ではこれらの無駄吠えに無視することはどうなのか?
結論から言うと、吠えた時の無視は”特定の状況”であれば効果的です。
それぞれ説明していきます。
無視が無駄吠えに効果的な場合
無視することは、犬が単に注意を引きたいために吠えている場合や何かを要求している時のみ有効です。
犬は飼い主の注意を引くために吠えることがよくあります。
この場合、犬が吠えた際に反応を示さず無視することで、犬は「吠えることが望んだ結果をもたらさない」と学習します。
このように、無視によって犬は吠えることで注意を引けないと理解し、徐々に吠える頻度を減らしていきます。
これは犬が他の理由で吠えている場合は全く意味がないため、無視するには犬が吠える理由を正確に理解することが重要です
他の原因を把握する
上述したように、無視が常に効果的であるわけではありません。
犬が恐怖や痛み、物理的な不快感など、他の理由で吠えている場合、無視することでは問題を解決しません。
もし犬が恐怖感で吠えている場合、環境を整えて安心感を提供するなど、原因に対処することが必要です
これは、犬の感情や健康状態に焦点を当て、適切なトレーニングや環境調整で対応することを意味します。
無視する方法は、犬が特定の理由で吠えている場合に限定されるため、犬の吠える理由を正確に把握し、それに応じた対応を取ることが、無駄吠えの問題解決には不可欠です。
無視の効果的なやり方
無視する行動は、犬の心理に影響を与えて行動変化を促します。
動物行動学では、「望ましくない行動に対して報酬や反応を与えず、望ましくない行動をやめたら報酬を与える」ことで、その問題行動を減らすことができるとされています。
犬が吠えるときは無視、静かになったときに報酬を与えることで、犬は静かでいることが報酬につながると学びます
このアプローチは、”犬が吠えることで特定の反応を得る”という期待を断ち切り、無駄吠えの頻度を減らすのに有効です。
吠え癖改善の基本ステップ
では次に、吠え癖を無視すること以外の改善方法についてまとめていきます。
吠える前のサインを見極める
犬は吠える前に多くの場合、”特定のサイン”を示します。
これらを識別し対応することで、無駄吠えを事前に防ぐことが可能になります。
特定のサインを見分けて適切に対応することで、飼い主は犬を落ち着かせ、吠える行動を未然に防ぐことができます。
例えば、犬が散歩中に他の犬に反応して吠えそうになるとき、その注意を別の活動に向けることで吠えることを避けることができます
吠えるサインを早期に識別し、注意を逸らすなどの対応をすることで、犬の無駄吠えを効果的に減らすことができます。
他にも、チャイムが鳴った時や大きな音が鳴った時、家の外を人が歩いている時などが無駄吠えのきっかけとなりやすいです。
褒めると叱るのバランス
注意を逸らして成功、失敗することがありますが、その際に犬の行動改善のためには、褒めることと叱ることの適切なバランスが不可欠です。
望ましい行動を促すためには褒めるポジティブな強化が効果的であり、叱るよりも効果がでやすいです。
上述した特定のサインでも別の活動へ注意を向けて吠えなかった場合は、いっぱい褒めてあげて下さい。
一方で不適切な行動を修正するためには、適切な指導も必要です。
叱る際に、「ダメ!」や「コラ!」とかなり大きな声で言ってしまうことはありませんか?
大きな声であれば静かになることはありますが、これは返って逆効果となります。
逆に、大きな声や音に対して恐怖感や不安を覚えてしまい、チャイムや物音の度に吠えるようになりやすいです。
また、飼い主への信頼感も薄れて、言うことを聞いてくれなくなったり、余計に吠えるようなってしまいます。
叱ることも大事ですが、「低い声」でダメと言うだけの方が理解してくれるので効果的です。
理解してくれたら、優しく撫でてあげましょう。
長丁場になりますが、この流れを繰り返していくしかありません。
家族全員で取り組む
犬の無駄吠えを管理するためには、家族全員の協力が必要です。
犬のトレーニングや行動管理においては、一貫性が鍵となります。
「ダメ!」と強く大声で叱る人や「コラ」と低い声で叱る人がいたら、どうすればいいかわからなくなる子もいます。
家族全員が同じルールと指導方法を適用することで、犬は混乱を避け、より速く学習することができます。
ストレスを減らす生活環境の整備
犬のストレスを管理し、快適な生活環境を提供することも、無駄吠えを減らす上で重要です。
ストレスが多い環境では、犬は不安定になりやすく、吠える行動が増えることがあります。
犬にとって安定した日々のルーティン、十分な運動、適切な社会的刺激は、ストレスを減らし無駄吠えを軽減します。
結局、無駄吠え防止で大切なのは、運動とストレスの軽減になります
これらの活動は、犬に安心感を与え、精神的な安定に寄与します。
無駄吠え改善の流れ
それぞれの内容の流れを一旦まとめます。
- 吠える特定のサインを見つける
- そのサインからなるべく別の活動へ注意を逸らす
- もし吠えない場合はおやつを与えるなどしていっぱい褒める
- 吠えた場合は低い声で叱る
- 繰り返しトレーニングを続ける
大変ですが、まずは吠える原因を見つけて、なるべくポジティブな対応で成功体験を与えてあげましょう。
叩く・大声は無駄吠えを悪化させるため、不安感を強くさせないようにだけ注意されて下さい。
犬の気を逸らす方法
これまで説明した流れで、注意を逸らすと記載しましたが、ここが少し難しい方もいると思うので少し補足しておきます。
犬の注意をそらすテクニックは、犬が外部の刺激、特定のサインに反応して吠える場合に特に有効です。
私達トレーナーは、犬が吠えそうになったときに、お気に入りのおもちゃや別の活動で犬の注意を引きつける方法を推奨しています。
例えば、散歩中に他の犬や人に反応し始めた場合、犬のお気に入りのおもちゃやおやつを見せることで、その注意を別の方向に向けます。
この方法は、犬の集中を切り替えることで、吠える行動の発生を予防します。
それで犬が吠えなかった場合は、おやつを与えて褒めてあげましょう。
それでも改善しない場合
ご自身で色々と試されても効果が出ない場合もあると思います。
本当に生き物のトレーニングは気が折れそうになり大変です。
犬によっては性格が気難しい子もいて、飼い主がうまく躾けていたとしても、吠え癖が止まらない子もいます。
ノイローゼになり、犬が嫌いになる方もいるほどですので、もう嫌だと思ったらトレーナーなど専門家に遠慮なく相談されて下さい。
私達トレーナーは、犬の行動の根本的な原因を特定し、その原因に対処するための具体的な方法を提案します。
ご自身で対応できるのが最も良いことですが、きつい時は頼り先もあるので、「私がしつけなければ」と思い込まれないでくださいね。
まとめ:犬の無駄吠えを無視が効果的なのは特定の状況のみ
この記事では、犬の無駄吠えを改善するには無視が効果的なこともあれば、全く効果がない場合もあることをご紹介しました。
では、最後に本記事の内容を再度まとめていきます。
- 吠える特定のサインを見つける
- 吠えるサインからおもちゃやおやつを使って別の活動へ注意を逸らす
- もし吠えなかった場合はおやつを与えるなどしていっぱい褒める
- 吠えた場合は決して大声で怒らず、低い声で叱る
- 繰り返しトレーニングを続ける
- 家族全員でバラバラにならず、一貫したやり方で取り組む
- 改善しない場合はノイローゼになる前に専門家に頼る
以上になります。
無駄吠えの改善はかなり根気が入ります。
本当に大変ですが、犬と人とストレスなく楽しく暮らせるよう、無理せず頑張っていきましょう。
ここまで見ていただきありがとうございます、本記事が少しでも参考になれば幸いです。